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2013/01/14

ひけらかすことなく

例えば、このブログにしても
何かの目的があって書いている。

それは、自分の劇団のPRになればと思ったり
しいては、私のアイデンティティーを発信したかったり
それは、さまざま。

ただ、時々
何にも発信する必要などないのではないかと思うことがある。
言葉で言えることなど、そこにいくつの真実があるのだろうかと、
いまだに女子学生よろしく、思ったりする。

田中一村、という画家いて
彼は日本画家の才能ある新人として出現し、そのまんま行けばエリートな道を歩むこともできたのに、わざわざドロップアウトしていった人。
近代の芸術家には、ままある話ではあるが。

彼がアウトしていった場所は、奄美大島。
そう、私の生まれた場所です。
かのゴーギャンがタヒチに流れ着き、多くの名画を残したように
田中一村もまた、なぜか奄美に流れ着き、慎ましく、ひそやかに、見ず知らずの土地や人々の中で暮らし、労働し、ささやかなお金を得ては、その全てを画材につぎ込み、絵を描き続けた。
そしてひっそり死んだあと、何年も経ってから、その頃に書いた絵の存在を多くのメディアで取り上げられ知られるようになった。

もしや、あの人がそうだったのかと
何年も前のある朝、NHKの日曜なんじゃらっていう美術番組を見ていて、記憶が目まぐるしく錯綜した。

あの時、私は高校2年か3年。
授業をサボっては逃げ込んでいたある場所があった。
すでに時代遅れのヒッピーのような暮らしをする女性が住んでいた人里離れた一軒家。

その近くに、朽ちた平家があった。
その昔、都会から来た初老の変人が住んでいるという。
しかもなにやら絵を描いているという。
その彼に、真夏の一本道で出会った。
ステテコ姿で、両手にブリキのバケツを下げて、すれ違った。
変人と聞いていたから、私はちょっと怖かった。

そのNHKの番組に、映し出された古い白黒の写真は
両手にバケツを下げた、痩せたステテコ姿の爺さんと、彼が住んでいた古びた民家。
年代も場所もぴったりだった。
あのうっそうと雑草に埋もれたような家も、あのすれ違った爺さんも…。

ほんとにそうだったのだろうかと思うけど、すでに確かめるすべもない。
でも私は、白昼夢のように、けれどはっきりと、その光景を覚えている。
両手にバケツを下げて、うだるような暑い真昼の一本道を、こちらに向かって歩いてくる、ちょっと怖いようなその人。
地元の人とは違う、異質な老人。てか風貌は老人なのだけどその目はぎらぎらと妙に生々しかった。だからこんなにも印象に残ってるんだろう。

彼が、秘境の奄美大島で、命を削るように描いた絵画には、まばゆいばかりの白い光がある。
たった一人、誰にもひけらすことなく、描き続けた絵は、光に満ちて美しい。

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コメント

虹のはじまりを探して駆け回る話、エチュード嫌い、過去、田中一村の話、
とても興味深く拝見しました。どれも昔のあなたに絡んだエピソードだ。
忘れていたり、知らなかったことに気付かせてくれました。
そう、おれはあなたの古くからのファンなのに、ほとんど何も知らない。
知ろうとしなかっただけか。

でもおれは、甘いメロディー知ってる。

ブログの更新たのしみにしてますだ

こんな衣装が来たいな〜(⌒▽⌒)キョートルティーザはやっぱり着物調が着たい!(≧∇≦)

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